イノベーションメモ

最終更新日 : 2012/12/30 (2012/12/30 より執筆開始)
下滝 亜里 <asatohan at gmail.com>
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ドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を参考に、イノベーションについてのメモ。

イノベーション

イノベーションとは

イノベーションは技術に限らない。モノである必要さえない。それどころか社会に与える影響力において、新聞や保険をはじめとする社会的イノベーションに匹敵するものはない。

割賦販売はまさに経済そのものを供給主導型から需要主導型へと変質させた。

一八世紀啓蒙主義による社会的イノベーションの一つである近代病院は、いかなる医学上の進歩よりも医療に大きな影響を与えた。

多様な知識や技術を有する人たちをともに働かせるための知識としてのマネジメントもまた、今世紀最大のイノベーションだった。それは、まったく新しい社会、いかなる政治理論や社会理論も準備していない組織社会を生み出した。

まさにイノベーションとは、技術というよりも経済や社会に関わる用語である。イノベーションは、J・B・セイが企業家精神を資源の生産力を変えることと規定したのと同じように定義することができる。あるいは、供給に関わる概念よりも需要に関わる概念、消費者が資源から得られる価値や満足を変えることと定義することができる。

イノベーションの成功

イノベーションとは市場や社会における変化である。それは顧客に対しより大きな利益をもたらし、社会に対しより大きな富の増殖能力、より大きな価値、より大きな満足を生み出す。イノベーションの値打ちは、顧客のために何を行うかによって決まる。同じく企業家精神も、常に市場志向、市場中心である。
結局のところ、イノベーションが成功するかどうかは、その新奇性、科学性、知的卓越性によってではなく、市場で成功するかどうかによって決まる。

イノベーションの体系とは

この新しいものを生み出す機会となるのが変化である。イノベーションとは意識的かつ組織的に変化を探すことである。それらの変化が提供する経済的、社会的イノベーションの機会を体系的に分析することである。

通常それらの変化は、すでに起こった変化や起こりつつある変化である。成功したイノベーションの圧倒的に多くが、そのような変化を利用している。イノベーションの中には、それ自体が大きな変化であるというものもある。しかしライト兄弟による飛行機の発明のような技術的イノベーションはむしろ例外に属する。実際には、成功したイノベーションのほとんどが平凡である。単に変化を利用したものにすぎない。したがって、イノベーションの体系とは、具体的、処方的な体系である。すなわちそれは、変化に関わる方法論、企業家的な機会を提供してくれる典型的な変化を体系的に調べるための方法論である。

イノベーションの機会

具体的には、イノベーションの機会は七つある。最初の四つは、企業や公的機関の組織の内部、あるいは産業や社会的部門の内部の事象である。したがって、内部にいる人たちにはよく見えるものである。それらは表面的な事象にすぎない。しかし、すでに起こった変化や、たやすく起こすことのできる変化の存在を示す事象である。まず第一が予期せぬ事の生起である。予期せぬ成功、予期せぬ失敗、予期せぬ出来事である。第二がギャップの存在である。現実にあるものと、かくあるべきものとのギャップである。第三がニーズの存在である。第四が産業構造の変化である。

残りの三つの機会は、企業や産業の外部における事象である。すなわち、第五が人口構造の変化である。第六が認識の変化、すなわちものの見方、感じ方、考え方の変化である。第七が新しい知識の出現である。

  1. 予期せぬ成功と失敗を利用する
  2. ギャップを探す
  3. ニーズを見つける
  4. 産業構造の変化を知る
  5. 人口構造の変化に着目する
  6. 認識の変化をとらえる
  7. 新しい知識を活用する

イノベーションの事例

社会や経済の領域でも同じことが起こる。経済においては購買力にまさる資源はない。購買力もまた企業家のイノベーションによって創造される。
十九世紀の初め、アメリカの農民には事実上購買力がなかった。そのため収穫機を買えなかった。数十種類もの収穫機が出ていたが買えなかった。そのため、収穫機の発明者の一人、サイラス・マコーミックが割賦販売を考えついた。これによって農民は、過去の蓄えからではなく未来の稼ぎから収穫機を購入できるようになった。突然、農機具購入のための購買力という資源が生まれた。
既存の資源から得られる富の創出能力を増大させるのも、すべてイノベーションである。
トラックの荷台を荷物ごと切り離して貨物船に載せるというアイデアは、新技術とは関わりがなかった。コンテナー船というイノベーションは貨物船を船としてでなく運搬具として見ることから生まれた。重要なことは、港での貨物の滞留時間を短くすることだった。コンテナー船という平凡なイノベーションが貨物船の生産性を四倍高め、海運業の危機を救った。そして経済史上最高の成長ともいうべき四十年間における世界貿易の伸びをもたらした。
レールの上を走りながら電力の供給を受けるというイノベーションが電車を生み出した。マッチ箱に常に(五十本という)同数のマッチ棒を詰めるというイノベーションがマッチ入れのオートメ化をもたらし、それを行ったスウェーデンのマッチメーカーに対し半世紀近くに及ぶ市場の独占をもたらした。

参考文献とリソース

  • イノベーションと企業家精神
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